小林慎太郎のブログ

ラブレター代筆、プレゼンテーション指導、スピーチライティングなどをサービスとして提供するデンシンワークス(dsworks.jp)代表、小林慎太郎のブログ

恋文横丁 ~ラブレター代筆屋の日々~Vol. 1

ヤソカルというWeb媒体にて、ラブレター代筆の仕事を通して考えたこと、体験談などを綴った「恋文横丁 ~ラブレター代筆屋の日々~」という記事を連載しています。

 

ひとりでも多くの方の目に触れてもらえればと思い、今後はこちらにも転載をしていこうと思う。

 

第一回目は、「”自分勝手”な想い」というお話。

 

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僕は、会社員として働くかたわら、平日夜や週末を利用して、個人としての活動をしている。”個人としての活動”というと、IT系のスタートアップやNPOなどを想起される人が多いかと思うが、そんなイカしたものではない。洒落たものではない。

 

では、なにか?

<ラブレターの代筆業>をしている。

それはなにか?

文字通り、依頼者からの要望を受け、依頼者に成り代わりラブレターの文面を考えるという仕事だ。

 

なぜそのような仕事をしようと思ったのかはおいおい触れるものとして、ここでは、そもそもそんなものに依頼をする人がいるのか?という問いに答えておく。

結論としては、いる。「いる!」と強く言い切れるほどの数はいないが、「まあ、ぼちぼち、いる」という程度には、いる。

 

依頼者は十代の女子高生から、七十代の男性まで。依頼内容も、告白、プロポーズ、感謝、復縁、自分自身への応援メッセージ、といったものまで様々。
つい先日は、復縁を願う二十代後半の女性から依頼があった。


別れた彼とヨリを戻したいという依頼。

 

 

 

カフェでドリップコーヒーを間に挟んで向き合いながら、
「自分から好きになって、自分で告白して、自分で嫌いになって、自分でふって、自分で後悔して、自分でヨリを戻そうとするって、すごい自分勝手ですよね、わたし」
依頼者は自嘲気味に唇の端をつりあげた。

 

確かに、理屈で考えると勝手と言えるかもしれないが、人が人を好きになること、人が人を嫌いになることは、理屈ではない感情の震えで、理性では制御しがたい力なので、そんなに自分を責めないでも。

 

そんなことを思いつつも、偉そうにそれをそのまま言葉として出すのはなんだかためらわれたので
「まあ、みんなそんなもんじゃないでしょうか・・・」と、毒にも薬にもならないような返事を僕はした。
「ちなみに、別れてからどのくらい経つんです?」
何の気なく問いかけると、目の前に置かれたコーヒーに向けていた視線をゆっくりと僕に向け、
「・・・三年です」
ためらいがちに依頼者が言った。
「三年?」
「はい、三年です」
「三年・・・」

 

三年か。
ただの三年ではない。後悔に駆られ、想い焦がれ、感情が揺れ続けた三年だ。
どのような日々だったのかは僕にはわからないが、安寧な日々でなかったことはわかる。それから一時間ほど話をし、依頼者と別れた。

 

別れ際、
「自分勝手なお願いで申し訳ありませんが、よろしくお願いします」

また、“自分勝手”という言葉を使い、依頼者は深々と頭を下げた。

最後くらいなにか気の利いた言葉をかけようと僕は口を開いたが、言葉を発することはなく、行き場のない口を半笑いに変えただけで終わってしまった。


その後、ラブレターの文面を依頼者に納品し、ありがとうございます、というお礼をもらったあとは、特に連絡はない。想いが成就したのか、叶わなかったのか。それとも、ラブレターを渡すことができなかったのか。どこにたどり着いたのか、僕にはわからない。もちろん、依頼者としては想いの成就が理想の結末なわけで、役割上、僕もそれを願うのだけれど、でも、必ずしも、その結末でなくてもいいのではないか、とも思う。

 

想いが叶わなかったとしても、望む道ではないかもしれないが、次のどこかへ、次の誰かへと依頼者は前に進むことができる。

ラブレターを渡すことができなかったとしても、今までと同じ日々を過ごすことになることになるとしても、誰かが誰かに想いを寄せるという行為には、苦しさとともに、期待や希望もひそんでいる。それはそれで幸せなことだと思う。

 

 

今回の依頼に関わらず、依頼者と交わる時間は、ごく限られた時間でしかない。交差点ですれ違う人のように、別のところから来て、一瞬だけ交わり、また、別の場所へと向かう。接するのは、人生全体で見たら、ないに等しいくらいのわずかな時間。

 

でも、ゼロではない。一瞬、一時、交わる。
すれ違う刹那、目配せをして、お疲れ、と心の中で声をかけ、また離れていく。
そんな感じ。

 

そして、僕は、そんな感じが結構気に入っている。
だから、当面は、この仕事を続けていくことになるのだろうと思う。